就業規則の見直しはいつ必要?変更手続きと確認項目【2026年版】

就業規則の見直し時期と変更手続きの確認ポイントを示すサムネイル

「就業規則は何年ごとに見直せばいいのか」「テレワークや新しい手当を始めたが、規則は以前のままでよいのか」と悩む中小企業の経営者は少なくありません。

就業規則の見直しは、古い条文を最新のひな型に差し替えるだけの作業ではありません。法令、本則と別規程、雇用契約書、勤怠・給与、社内様式、実際の運用が同じ基準で動くように整える作業です。

本記事では、就業規則の見直しが必要なタイミング、2026年に確認したい制度変更、規定ごとのチェック項目、意見聴取・届出・周知の手順を解説します。公的情報は2026年9月8日時点で確認しています。

結論|就業規則の見直しは「法改正」と「実態の変化」の両方で判断する

経営者と社労士が就業規則と現場の働き方を照合する様子

就業規則の見直しは、「3年ごと」のような年数だけで決めるものではありません。法改正と、会社の人数・雇用区分・勤務・賃金・休職等の変化のどちらかがあれば、規則と現状を照合します。

実務では、法改正のたびに該当箇所を確認するとともに、年に1回など社内の確認日を決めておくと、小さな運用変更の積み残しを防ぎやすくなります。

今すぐ確認する3点

  • 最新版:社内で使っている就業規則の施行日、改定日、届出控えを確認する
  • 実際の運用:始業・終業、手当、休暇、休職、テレワーク等が条文と一致しているか確認する
  • 手続きと周知:意見書、変更届、従業員が常時確認できる状態を点検する

就業規則の見直しが必要な8つのタイミング

法改正や人数と働き方の変化から就業規則の見直し時期を判断するイメージ

次のどれかに該当する場合は、就業規則の見直しタイミングです。ただし、変化があれば必ず本則全体を書き換えるという意味ではありません。影響する条文、別規程、社内様式を切り分けます。

見直しタイミング 主な確認箇所
1.労働関係法令が改正される 施行日、対象者、経過措置、関連規程・様式
2.事業場で常時使用する労働者が10人以上になる 作成・届出義務、適用対象、事業場単位
3.正社員以外の雇用区分が増える 適用範囲、無期転換、賃金、休暇、異動、退職
4.テレワーク、フレックス、シフト等を始める 労働時間、休憩、費用負担、連絡方法、情報管理
5.賃金・手当・評価・退職金等を変える 賃金規程、雇用契約書、給与設定、不利益変更の可能性
6.休職・復職・懲戒・雇用終了で判断に迷う 判断基準、申請書、面談・指導記録、医師等の意見の扱い
7.ハラスメントや社内トラブルが起き、対応手順が機能しなかった 方針、禁止行為、相談窓口、事実確認、対処、不利益取扱いの防止
8.助成金の取組を検討する 実施前の規定、施行日、届出、周知、雇用契約・勤怠・賃金との整合

就業規則以外の雇用契約、勤怠、賃金、保険手続きも含めて確認する場合は、中小企業の労務管理チェックリストをご覧ください。本記事では、就業規則の見直しに範囲を絞って解説します。

2026年の就業規則見直しで確認したい制度変更

2025年と2026年の制度変更をカレンダーと規程で確認する様子

2025年から2026年にかけて、育児・介護休業とハラスメント対策に関する重要な変更があります。本則だけでなく、育児・介護休業規程、ハラスメント規程、相談マニュアル、申出書、個別周知書類まで確認します。

2025年4月・10月施行の育児・介護休業法

2025年4月1日・10月1日に改正育児・介護休業法が段階的に施行されました。子の看護休暇の対象・取得事由の拡大、所定外労働の制限の対象拡大、介護離職防止のための個別周知・意向確認、柔軟な働き方を実現するための措置などを、自社の対象者と制度に合わせて点検します。

厚生労働省は、令和8年3月作成の育児・介護休業等に関する規則の規定例を公開しています。規定例のみでなく、社内様式、労使協定例、個別周知・意向確認の参考様式も照合対象です。

厚生労働省の令和7年12月版モデル就業規則

厚生労働省のモデル就業規則は、2026年9月8日確認時点で令和7年12月版が掲載されています。古いモデルを基にしたままの会社は、現行版と差分を確認しましょう。

ただし、モデルは公式の参考資料であっても、自社にそのまま適用できる完成品ではありません。業種、勤務制度、雇用区分、手当、社内手続きに合わせた調整が必要です。

2026年10月1日からのハラスメント防止措置

2026年10月1日から、カスタマーハラスメントと求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が事業主の義務になります。本記事の確認日時点では施行前です。

対応は、就業規則の一文を追加すれば終了とは限りません。方針の明確化と周知、禁止行為と対処内容、相談窓口、事実確認、従業員の保護、教育などを、本則・別規程・マニュアルのどこで定めるか検討します。詳細は厚生労働省の職場におけるハラスメント防止の案内で確認できます。

就業規則の見直しチェックリスト|書類と実運用を照合する

就業規則と賃金規程や雇用契約書と実運用を照合する様子

最初に集める書類

改定箇所を探す前に、現行版と関連資料を一度に集めます。「届け出た版」「社内サーバーにある版」「新入社員へ渡した版」が異なると、どのルールを現行として運用しているのかが不明確になります。

  • 就業規則本則と付則、新旧対照表
  • 賃金、育児・介護休業、テレワーク、ハラスメント、退職金等の別規程
  • 過去の就業規則作成・変更届と意見書
  • 雇用区分ごとの労働条件通知書・雇用契約書
  • 最近の勤怠記録、給与明細、賃金台帳
  • 休暇・休職・復職・残業・ハラスメント相談等の社内様式

規定ごとの照合先

規定領域 照合する資料・実態 見落としやすい点
適用範囲 雇用区分、定年後再雇用、短時間勤務者 「従業員」の範囲が別規程と異なる
始業・終業、休憩、休日 勤務表、シフト、タイムカード、テレワーク 実際の交替制や準備・片付け時間が反映されていない
賃金・手当 雇用契約書、賃金規程、給与ソフト、給与明細 手当名、支給条件、固定残業代の扱いが不一致
休暇・休業 申請書、対象者一覧、付与・取得記録、個別周知書 規定を更新しても様式や案内文が古い
休職・復職 診断書、申請・通知書、面談記録、安全配慮 期間満了だけを機械的に判断する設計
懲戒・退職・解雇 指導書、面談記録、改善機会、同種事案の取扱い 評価語だけで事実、日時、影響が記録されていない
ハラスメント 方針、禁止行為、相談窓口、事実確認フロー、研修 禁止規定はあるが、相談後の対応が決まっていない

改定範囲と優先順位を決める

全文を一度に改定するのか、特定の別規程だけを先に改定するのかを決めます。施行期限が近い法改正、現在すでに運用と矛盾している項目、従業員への重大な影響がある項目から優先順位を付けます。

就業規則を変更する7つの手順

現状調査から意見聴取と届出と周知までの就業規則変更手順

就業規則の変更は、文案を作って労働基準監督署へ届け出れば終了ではありません。影響調査と従業員への説明、周知後の運用切替えまで含めて設計します。

1.現行版と実態を確認する

最新とされている文書、労働基準監督署へ届け出た版、従業員が閲覧している版を照合します。併せて、雇用契約書、勤怠、給与、社内様式が実際にどう運用されているかを確認します。

2.改定案と施行日を決める

改定の根拠、対象者、変更前後の差、施行日、経過措置を整理します。付則に施行日を示し、本則と別規程で日付が食い違わないようにします。

3.不利益変更の可能性を確認する

賃金、手当、休日、福利厚生、退職金等を従業員に不利益に変更する可能性がある場合は、文案の前に変更の必要性と影響を確認します。「届け出れば有効」とは判断しません

4.従業員へ説明する

なぜ変えるのか、誰にどのような影響があるのか、いつからどの様式で手続きするのかを説明します。制度が実務で動くかどうかを、現場管理者と担当者の両方で確認します。

5.過半数代表者等の意見を聴く

事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があればその労働組合、なければ労働者の過半数を代表する者の意見を聴きます。過半数代表者は、使用者が指名するのではなく、投票や挙手等の民主的な方法で選出します。

6.労働基準監督署へ届け出る

常時10人以上の労働者を使用する事業場で就業規則を変更した場合は、就業規則作成(変更)届に意見書を添え、所轄労働基準監督署長へ届け出ます。複数の事業場がある場合は、対象事業場と管轄を確認します。

7.周知し関連様式と運用を更新する

就業規則は、見やすい場所への掲示・備付け、書面の交付、または従業員が常時確認できる電子機器等の方法で周知します。社内ポータルに保存するだけでなく、閲覧権限、場所、最新版の識別方法まで確認します。

最後に、雇用契約書、給与設定、就業管理システム、各種申請書、従業員向け案内を同じ施行日で切り替えます。

賃金や休日などの不利益変更は、届出すれば有効になるわけではない

就業規則の届出手続きと労働条件の不利益変更を分けて確認する様子

就業規則の届出手続きを完了したことと、個々の労働条件変更が有効であることは、分けて考える必要があります。

過半数代表者等の「意見」と従業員の「同意」は別

労働基準法第90条で求められるのは、過半数労働組合または過半数代表者の意見を聴くことです。意見書に反対意見が書かれたことだけで、届出できなくなるわけではありません。

一方で、労働契約の内容を従業員に不利益に変更する場合の「合意」や、合意なく就業規則を変更する場合の合理性は、別の問題です。「意見書を取ったから不利益変更も問題ない」とは言えません。

不利益変更で確認する要素

労働契約法は、合意なく就業規則の変更により労働者に不利益に労働条件を変更することを原則として制限しています。労働契約法第10条では、変更後の就業規則が周知され、次のような事情に照らして変更が合理的であることが問われます。

  • 労働者が受ける不利益の程度
  • 労働条件を変更する必要性
  • 変更後の内容の相当性
  • 労働組合等との交渉状況
  • その他の変更に関する事情

賃金や退職金の削減、休日の減少等の重要な変更は、会社ごとの必要性、影響、説明経過が異なります。実行前に個別の検討が必要です。

就業規則の見直しで起こりやすい6つの失敗

古い規程や書類の矛盾と未周知を点検する経営者

1.モデル就業規則をそのまま使う

モデルに自社にない制度が残ったり、実際の勤務時間や賃金制度と合わなかったりすると、書面上のルールと運用が分断します。利用する制度と利用しない制度を切り分けます。

2.本則だけ改定して別規程を残す

本則の引用先となる賃金規程、育児・介護休業規程、ハラスメント規程等が古いままだと、どちらを優先するのか分からない状態になります。規程一覧に版、施行日、管理者を記録します。

3.雇用契約書・給与・勤怠と矛盾する

就業規則で手当の条件を変えても、雇用契約書と給与ソフトの設定が古いままでは、実際の支払いに反映できません。条文単位で「影響する書類とシステム」を紐付けます。

4.届出だけで周知しない

労働基準監督署の受付印があることと、従業員が変更後の規則を確認できることは別です。旧版の撤去、新版の保存先、対象者への案内、問合せ先を設定します。

5.制度開始後に後付けする

新しい勤務制度や手当を先に始め、後から就業規則を合わせようとすると、制度開始日と施行日の間の扱いが曖昧になります。対象者、申請方法、勤怠・給与設定を決めてから開始します。

6.人事判断を規定の一文だけで進める

当事務所が把握する匿名の労務トラブルでは、会社が自作の雇用契約書と就業規則に沿って雇用を終了した後、元従業員から不当解雇等を主張され、会社側が最終的に解決までの期間に対応する賃金を支払うことになった事例があります。

これは公的な裁判資料に基づく判例・判決の紹介ではありません。ただし、解雇、退職勧奨、合意退職、辞職、雇止めは性質が異なります。規定の有無だけでなく、理由となる事実、記録、指導・注意、改善機会、対応の相当性等を実行前に確認する必要があります。

従業員10人未満の事業場でも就業規則を見直したいケース

少人数の会社で経営者と従業員が職場のルールを確認する様子

従業員数は会社全体ではなく事業場ごとに確認

労働基準法第89条により、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成・届出が必要です。人数は原則として会社全体ではなく、本店、支店、店舗等の事業場単位で確認します。

「常時」は、たまたまその日に10人いたかではなく、常態として使用している人数で判断します。正社員だけでなく、パートタイマーや有期契約労働者等も含めて実態を確認します。

10人未満でもルールの統一が必要な場面

10人未満の事業場は、労働基準法上の就業規則の作成・届出義務の対象外です。しかし、就業規則が不要ということと、労働条件や職場のルールを整えなくてよいことは同じではありません。

身近な会社でも、雇用区分が複数ある、手当や休暇の扱いが人によって異なる、休職・復職の判断基準がない、将来10人以上になる予定があるといった場合は、予防的に統一ルールを整える価値があります。

助成金を検討するなら、取組前に就業規則を確認する

取組開始前に就業規則と助成金の必要書類を確認する様子

雇用関係の助成金には、対象となる制度を就業規則等に規定し、取組を実施する前に計画や社内整備が必要なものがあります。実施後に施行日を過去にさかのぼって整えることは避け、検討段階で最新の支給要領、パンフレット、申請様式を確認します。

就業規則の整備だけで受給が決まるわけではない

就業規則に文言があることだけで、助成金の対象や受給が保証されるわけではありません。雇用保険の適用、対象労働者、実施前の手続き、勤怠、賃金台帳、支払実績、申請期限等の共通要件と個別要件を確認します。

制度を広く比較したい方は、2026年の中小企業向け助成金・補助金一覧も参考にしてください。

就業規則の見直しに関するよくある質問

就業規則の見直しについて社労士へ質問する経営者

就業規則は何年ごとに見直すべきですか?

「何年ごとに必ず全文改定する」という固定周期ではなく、法改正と会社の実態変化の都度確認します。加えて、年に1回など確認日を設け、改定日、別規程、雇用契約書、運用のずれを点検する方法が現実的です。

過半数代表者が反対意見を書いたら届出できませんか?

反対意見があることだけを理由に届出できない制度ではありません。実際の意見を意見書に記載し、就業規則作成(変更)届に添付します。ただし、反対理由に合理性、不利益、運用不可能等の問題が含まれる場合は、届出とは別に内容を再検討します。

施行日は届出日より後にすべきですか?

変更内容によって判断が異なるため、日付だけで一律に決めるのは適切ではありません。可能な限り施行前に、内容確認、説明、意見聴取、届出準備、周知、運用様式の更新を終える計画にします。法改正の施行日、不利益変更、過去の運用との関係がある場合は、施行前に個別確認が必要です。

社労士に改定だけ依頼できますか?

はい。DHorse社会保険労務士事務所は、顧問契約だけでなく、就業規則の作成・改定のスポット依頼にも対応しています。2026年9月時点の料金は、顧問契約がない場合、作成250,000円から、改定100,000円から(いずれも税別)です。複雑な内容は別途お見積りします。

顧問契約がある場合の条件付き料金や、継続的な管理とスポット整備の選び方は、社労士の顧問契約とスポット依頼の比較で解説しています。

まとめ|就業規則と現場の運用を同じタイミングで更新する

最新の就業規則と関連書類を整えて運用する中小企業

就業規則の見直しでは、法令への対応だけでなく、会社の現在の働き方と文書を一致させることが重要です。

  • 法改正と会社の実態変化の両方を見直しの起点にする
  • 本則、別規程、雇用契約書、勤怠・給与、社内様式を一度に照合する
  • 意見聴取、届出、周知、実運用への反映までを一つの改定工程とする
  • 賃金や休日等の不利益変更は、届出の有無だけで判断しない

古い箇所がどこか分からない、規程が多く優先順位を決められない、実際の勤務・賃金との矛盾が心配という場合は、現行版と関連資料を用意し、専門家と一緒に改定範囲を整理しましょう。

主な公的情報

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