2026年8月5日、愛知・岐阜・三重の東海三県で、2026年度(令和8年度)の地域別最低賃金に関する答申・意見公示が行われました。3県とも2026年10月1日の発効予定で、愛知県は1,195円、岐阜県は1,121円、三重県は1,143円が答申されています。
今回の引上げに対応するだけでなく、賃上げと生産性向上のための設備投資を一緒に進める中小企業は、業務改善助成金を利用できる可能性があります。ただし、3県では予定どおり10月1日に発効する場合、申請と賃上げは原則として9月30日までです。申請前に賃金を上げたり、交付決定前に設備を発注したりすると対象外になり得るため、8月中の準備が重要です。
この記事の結論
- 答申額は、愛知1,195円、岐阜1,121円、三重1,143円。発効予定日は3県とも2026年10月1日
- 8月6日時点では答申・意見公示の段階であり、異議申出等の手続を経た最終決定前
- 業務改善助成金の対象候補は、改定後の地域別最低賃金未満の事業場内最低賃金を50円以上引き上げ、生産性向上設備等を導入する中小企業・小規模事業者
- 9月1日以降に申請、申請後に賃上げ、交付決定後に設備投資の順番を守る
- 8月中に賃金計算、対象労働者、就業規則案、見積書、設備の改善効果を確認する
2026年度・東海三県の最低賃金答申額
| 都道府県 | 現行額 | 答申額 | 引上げ額 | 発効予定日 |
|---|---|---|---|---|
| 愛知県 | 1,140円 | 1,195円 | 55円 | 2026年10月1日 |
| 岐阜県 | 1,065円 | 1,121円 | 56円 | 2026年10月1日 |
| 三重県 | 1,087円 | 1,143円 | 56円 | 2026年10月1日 |
上表は、2026年8月5日に各地方最低賃金審議会が示した答申・意見の内容です。愛知労働局は1,195円への改正予定、三重労働局は異議申出の公示などの手続を経て改正決定する予定と案内しています。岐阜県も意見公示の段階です。
2026年8月6日時点では、3県とも最終決定・発効前です。給与改定を確定する際は、官報公示や各労働局の正式な改正案内をもう一度確認してください。
最低賃金改定で経営者が確認する4つのこと
1.パート・アルバイトを含む対象者を確認する
地域別最低賃金は、原則として年齢や雇用形態に関係なく、県内の事業場で働く労働者に適用されます。正社員だけでなく、パート、アルバイト、学生、外国人労働者も対象です。派遣労働者には、派遣先の地域別または特定最低賃金が適用されます。
2.月給者も時間額へ換算する
時給者だけを確認して終わりではありません。月給者は、原則として月給額を1か月平均所定労働時間数で割り、時間額へ換算します。精皆勤手当、通勤手当、家族手当、賞与、時間外・休日・深夜労働の割増賃金など、最低賃金の計算に算入しない賃金を除いて確認します。
3.特定最低賃金との高い方を確認する
特定の産業には、地域別最低賃金とは別に特定最低賃金が定められている場合があります。両方が適用される労働者には、原則として高い方の金額を支払う必要があります。該当業種では、地域別最低賃金の表だけで判断しないようにしましょう。
4.最低賃金より少し上の層も見直す
最低額の労働者だけを新額まで上げると、経験年数や職責が異なる労働者との賃金差が縮まり、不公平感につながることがあります。法令対応に加え、等級、役割、勤続年数を踏まえた社内の賃金バランスも確認してください。
業務改善助成金を最低賃金引上げと一緒に検討するメリット
業務改善助成金は、事業場内で最も低い時間当たり賃金を50円以上引き上げ、生産性向上や労働能率の増進につながる設備投資等を行った場合に、その費用の一部を助成する制度です。
令和8年度は50円・70円・90円コースがあり、助成上限額は引き上げる労働者数と事業場規模により変わります。助成率は、引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4です。助成上限額は最大600万円ですが、実際の助成額は対象経費に助成率を掛けた額と助成上限額の低い方を基準に、審査を経て決まります。
最低賃金の改定により人件費が増える時期に、POSレジ、顧客・在庫管理システム、省力化機器、業務フロー改善などへ投資し、作業時間の短縮や生産性向上も同時に進められる点がメリットです。制度の助成上限額や申請手順の詳細は、2026年度の業務改善助成金の申請ガイドもご覧ください。
業務改善助成金の対象となる事業者チェックリスト
次の項目をすべて満たす事業場は、対象候補です。
- 中小企業・小規模事業者である
資本金または常時使用する企業全体の労働者数のいずれかが、業種別の基準以下で、みなし大企業に当たらないこと。 - 現在の事業場内最低賃金が法定最低賃金以上である
申請時点で適用されている地域別・特定最低賃金を下回っている事業場は対象外です。 - 事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金未満である
申請時点で、事業場で最も低い時間給の労働者が、改定後の地域別最低賃金以上なら申請できません。 - 雇入れ後6か月を経過した雇用保険被保険者がいる
事業場内最低賃金の引上げ対象者には、雇入れ後6か月経過などの要件があります。 - 事業場内最低賃金を50円以上引き上げられる
50円・70円・90円コースのいずれかを選び、申請後かつ地域別最低賃金発効日の前日までに引き上げます。 - 生産性向上につながる設備投資等がある
機器、システム、国家資格者による経営コンサルティングなどで、申請事業場の作業時間短縮や労働能率増進を説明できること。 - 解雇・賃金引下げ等の不交付事由がない
一定期間の解雇や賃金引下げ、労働保険料の滞納、労働関係法令違反、同一経費への他の助成などを確認します。
中小企業の規模基準
| 業種 | 資本金または出資総額 | 常時使用する企業全体の労働者数 |
|---|---|---|
| 一般産業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
資本金と労働者数は、どちらか一方を満たせば規模要件の候補です。ただし、大企業との資本関係などにより、みなし大企業として対象外になる場合があります。医療法人、社会福祉法人、NPO法人など資本金がない法人は、主に常時使用する労働者数で判断します。
東海三県で対象候補になりやすい事業場
地域別最低賃金だけが適用される事業場を例にすると、現行の法定最低賃金以上で、答申額未満の事業場内最低賃金であることが最初の確認点です。
| 都道府県 | 対象可能性を確認する事業場内最低賃金の範囲 |
|---|---|
| 愛知県 | 1,140円以上1,195円未満 |
| 岐阜県 | 1,065円以上1,121円未満 |
| 三重県 | 1,087円以上1,143円未満 |
これは地域別最低賃金のみを使った初期判定です。特定最低賃金の適用、賃金の算入範囲、雇用保険・雇入れ期間、賃上げ額、設備投資、不交付事由によって結論は変わります。
予定どおり10月1日発効なら、申請・賃上げは9月30日まで
令和8年度の業務改善助成金は、2026年9月1日から受付開始です。申請期限は、その都道府県の地域別最低賃金発効日の前日または2026年11月30日のいずれか早い日です。賃上げも申請後から発効日前日までに行います。
東海三県の答申どおり2026年10月1日に発効する場合、申請期間は9月1日から9月30日まで、賃上げも申請後から9月30日までという短い日程になります。
- 8月中:申請準備
対象判定、賃金の再計算、就業規則等の改定案、設備の見積もり、改善効果、資金・納期を整理します。まだ賃上げの適用や設備発注はしません。 - 9月1日以降:交付申請
事業場所在地を管轄する都道府県労働局へ交付申請書と事業計画を提出します。 - 申請後から9月30日:賃上げ
選択コースの金額以上を1回で引き上げ、引上げ後の事業場内最低賃金と同額を就業規則等に記載し、適用します。 - 交付決定後:設備投資
交付決定通知を確認してから、設備の発注・契約・導入・支払いを行います。 - 事業完了後:実績報告と支給申請
賃金台帳、就業規則、納品・請求・支払記録、設備写真などを提出し、審査と額の確定を経て支給されます。
順番を逆にしないでください。
- 申請前に賃上げすると、計画に基づく賃上げとして認められない場合があります。
- 発効日当日の10月1日に賃上げても、業務改善助成金の賃上げ期限後です。
- 交付決定前に設備を発注・契約・導入すると、助成対象になりません。
当事務所の申請支援経験から注意したい3点
賃金は数円単位まで資料を合わせる
当事務所の匿名化した助成金支援案件では、実労働時間から再計算した賃金額と実際の支給額に数円単位の差があり、確認を受けた例があります。数円の差が必ず不交付になるという意味ではありませんが、勤怠記録、賃金台帳、給与明細、振込額、端数処理、就業規則の所定労働時間を申請前に照合することが大切です。
交付決定までの長期化を見込む
当事務所の匿名化した業務改善助成金支援案件では、2025年10月頃の申請後、2026年7月下旬時点でも交付決定に至っていない案件が複数あります。これは当事務所の支援案件の経験であり、全国平均ではありません。
交付決定前に設備を発注できない一方、交付決定後は事業完了期限があります。令和8年度の事業完了期限は原則として交付決定の属する年度の1月31日で、やむを得ない理由が認められた場合は3月31日まで延長されることがあります。設備納期、立替資金、追加資料への対応期間に余裕を持ちましょう。
令和8年度は一般の自動車が対象外
令和8年度は、助成対象経費の特例となっていた自動車(特殊用途自動車を除く)が対象外です。当事務所でも、営業車や送迎車を前提とした相談で投資計画を見直した例があります。特殊用途自動車も、区分だけで自動的に対象になるわけではなく、生産性向上との関係を個別に確認します。
8月中に準備したいチェックリスト
- 労働者ごとの雇用形態、雇入れ日、雇用保険加入状況
- 直近の賃金台帳、勤怠記録、給与明細、給与振込記録
- 月給・日給・歩合給を含む時間当たり賃金の再計算
- 就業規則、賃金規程、雇用契約書と実運用の整合性
- 50円・70円・90円コースごとの引上げ対象人数と人件費試算
- 設備導入前後の作業工程と削減できる時間
- 設備の仕様書、原則2者以上の見積書、交付決定後の納期
- 設備代金を立て替える資金計画
- 解雇、賃金引下げ、労働保険料滞納、法令違反、他の助成との重複の確認
8月中に「申請できる一歩手前」まで準備しておくと、9月1日の受付開始後に、申請と賃上げの順番を守って進めやすくなります。
よくある質問
最低賃金が上がるから自動的に助成金を受けられますか?
いいえ。法定最低賃金への対応だけで自動的に支給される制度ではありません。中小企業規模、事業場内最低賃金、対象労働者、50円以上の計画的な賃上げ、生産性向上設備、不交付事由などを満たし、交付申請、交付決定、事業実施、実績報告、支給申請を経る必要があります。
申請前に見積もりを取ってもよいですか?
見積書の取得や設備仕様の検討は申請準備として必要です。ただし、交付決定前の発注・契約・導入・支払いは避けてください。販売事業者には、見積有効期限と交付決定後の納期も確認しましょう。
答申額が最終決定された後に相談しても間に合いますか?
3県とも10月1日発効予定で、業務改善助成金は9月1日受付開始です。正式決定を待ってから賃金計算、規程案、見積、設備効果を一から整理すると、9月30日までの申請・賃上げに間に合わないおそれがあります。答申額を基に今から準備し、正式決定後に最終確認する進め方が現実的です。
まとめ:東海三県の事業者は8月中に対象判定を
東海三県の2026年度最低賃金は、愛知1,195円、岐阜1,121円、三重1,143円が答申され、3県とも10月1日発効予定です。最低賃金対応と同時に生産性向上投資を検討する事業者にとって、業務改善助成金は有力な選択肢ですが、9月の短い期間に申請と賃上げを正しい順番で進める必要があります。
DHorse社会保険労務士事務所は、東海三県を中心に、事業場内最低賃金の確認、月給者の時間額換算、就業規則・賃金規程の整備、勤怠・賃金資料の点検、業務改善助成金の申請支援を行っています。
自社が対象候補か分からない、9月30日までの準備に不安がある、設備投資と賃上げの順番を確認したい方は、最低賃金対応・業務改善助成金の無料相談を申し込むよりご相談ください。
制度情報は2026年8月6日に確認しました。参照:愛知労働局「愛知県最低賃金が10月1日から1,195円に改正予定」、岐阜労働局「公示関係」、三重労働局「令和8年度 三重地方最低賃金審議会答申」、厚生労働省「業務改善助成金」「令和8年度業務改善助成金のご案内」「申請マニュアル」「業務改善助成金Q&A」。最低賃金額・発効日、助成金の受付状況・要件は変更される場合があります。実際の給与改定、申請、賃上げ、設備発注前に、最新の公式情報と管轄労働局で個別要件をご確認ください。







