働き方改革推進支援助成金【2026年】対象経費・5コース・申請期限

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残業を減らしたい、年次有給休暇を取得しやすくしたい、勤怠管理システムや省力化設備を導入したい。そんな中小企業が検討できるのが、働き方改革推進支援助成金です。

2026年度(令和8年度)は5コースで、交付申請期限は2026年11月30日(月)午後5時です。ただし、予算の制約により期限前に受付を終了する場合があります。

この助成金は「何を買うか」から考えると失敗しやすい制度です。先に労働時間、休暇、勤務間インターバルなどの成果目標を決め、その達成に必要な取組と設備を組み立てます。

この記事では、2026年8月19日時点の厚生労働省資料を基に、5コースの選び方、対象経費、助成率・上限額、賃上げ加算の日程、申請から支給までの期限、中小企業が先に整える書類を解説します。

結論|成果目標と申請順序が受給の土台

働き方改革推進支援助成金の検討では、次の順序が重要です。

  1. 解決したい労務課題を決める
    残業の上限、年休制度、特別休暇、勤務間の休息時間などを整理します。
  2. 対象コースと成果目標を選ぶ
    企業の業種、現在の36協定、労働時間の実態、休暇制度の整備状況を確認します。
  3. 成果目標の達成に必要な取組を計画する
    就業規則の変更、研修、コンサルティング、勤怠機器、省力化設備などを組み合わせます。
  4. 交付申請を行う
    見積書、事業実施計画、勤怠、賃金、年休管理簿等をそろえます。
  5. 交付決定後に契約・発注する
    交付決定前に契約行為等をすると、その内容は助成対象に含められません。
  6. 実施・支払い・支給申請を完了する
    交付決定は入金確定ではありません。成果目標を達成し、実績報告と支給申請の審査を経る必要があります。

働き方改革推進支援助成金とは

働き方改革推進支援助成金は、生産性を向上させながら、労働時間の短縮、年次有給休暇の促進、勤務間インターバルの導入などに取り組む中小企業主等を支援する制度です。

単なる設備投資の助成ではありません。成果目標と改善事業が結び付き、導入後に労働時間等の設定が改善される計画になっているかが大切です。

そのため、業務改善助成金と同じ設備費に対して重複して交付決定を受けることはできません。賃上げと設備投資が主目的の場合は、業務改善助成金の解説と比較してください。

2026年度の5コースと選び方

令和8年度は5つのコースがあります。現行の公開済み記事では4コースとしていましたが、2026年度新設の取引環境改善コースと団体推進コースは別のコースです。

コース 主な対象・課題 基本上限の目安 判断ポイント
業種別課題対応コース 建設業、運送業、病院等、砂糖製造業、情報通信業・宿泊業 25万〜550万円 業種ごとに選べる成果目標と上限が異なる
労働時間短縮・年休促進支援コース 36協定の上限短縮、年休の計画的付与、時間単位年休と特別休暇の導入 25万〜200万円 一般の中小企業が幅広く検討しやすい
勤務間インターバル導入コース 終業から次の始業までの休息時間を新設・拡大・延長する企業 50万〜150万円 原則として過去2年間に月45時間を超える時間外労働の実態があること等が必要
取引環境改善コース 荷主・倉庫事業者と運送事業者を含む3者以上の荷主集団等 100万円 2026年度新設。荷待ち・荷役時間と労働時間を短縮する
団体推進コース 事業主団体等が傘下企業の労働条件を改善 500万円 通常の1社単独申請とは対象が異なる

一般企業が1社で利用する場合は、主に「業種別課題対応」「労働時間短縮・年休促進支援」「勤務間インターバル導入」の3コースから、業種と現状に合うものを検討します。

対象事業主と申請前の必須整備

労働時間短縮・年休促進支援コースの主な共通要件は次のとおりです。他のコースには別の要件が加わります。

  • 労災保険の適用事業主である
  • 業種ごとの資本金または常時使用する労働者数の中小企業基準を満たす
  • すべての指定事業場で、年次有給休暇の付与実績にかかわらず年休管理簿を作成している
  • 常時10人以上を使用する指定事業場は、年休の時季指定に関する定めのある就業規則を交付申請前に労働基準監督署へ届け出ている
  • 労働時間等設定改善法と同指針に基づく措置を事業実施計画に盛り込む

中小企業基準は、例えば小売業なら資本金5,000万円以下または常時50人以下、サービス業なら資本金5,000万円以下または常時100人以下、その他の業種なら資本金3億円以下または常時300人以下が目安です。業種の分類と例外は申請時に確認してください。

対象経費|勤怠システム・設備・就業規則はどこまで

個別企業向けコースでは、主に次の取組が助成対象候補です。

  • 労務管理担当者への研修
  • 労働者への研修、周知・啓発
  • 社会保険労務士等の外部専門家によるコンサルティング
  • 就業規則・労使協定等の作成・変更
  • 人材確保に向けた取組
  • 勤怠管理ソフト等の導入・更新
  • ICカード打刻機器等の労務管理用機器の導入・更新
  • デジタル式運行記録計の導入・更新
  • 生産機械、業務用設備等の労働能率を増進する設備・機器の導入・更新

対象になるかは設備名だけでは決まりません。現行作業、投入人数・時間、導入後の削減効果、成果目標との関係を一連で説明できることが重要です。

2026年6月に厚生労働省が公表した活用の手引きには、ハンディターミナルによる在庫管理・入力作業の短縮や、食品加工機器による省力化などの事例が紹介されています。ただし、同じ設備なら必ず対象になるという意味ではありません。

PC・タブレット・スマートフォン

PC、タブレット、スマートフォン等の汎用事務機器は原則として対象外です。一方、POSシステムや会計給与システムなど、特定業務専用のシステムを稼働させるために導入することが明らかな場合は、対象に含められることがあります。

乗用自動車等と長時間労働恒常化特例

乗用自動車等の購入は原則対象外です。長時間労働恒常化特例で乗用自動車等やPC等を対象に含められる場合がありますが、過去に長時間労働があっただけでは足りません。

すべての指定事業場について、交付申請日を含む過去2年間にわたり1日も途切れず36協定が有効であり、同期間にわたり36協定の特別延長時間が1か月60時間を超えていること等の条件があります。対象車両の価格・定員にも条件があるため、個別確認が必要です。

助成率・上限額・2つの加算

個別企業向けコースの助成額は、原則として次のいずれか低い額です。

  • 成果目標ごとの助成上限額と加算額の合計
  • 対象経費の合計×助成率3/4

常時使用する労働者数が30人以下で、労務管理用ソフト・機器等または労働能率を増進する設備・機器等の取組に30万円を超える費用を要する場合は4/5です。「30人以下なら一律4/5」ではありません。

賃上げ加算

賃上げ加算は、引き上げた賃金自体を補填する仕組みではありません。基本の成果目標と併せて達成した場合に、助成上限額が加算されます。

引上げ率は3%・5%・7%以上の区分があり、対象人数と企業規模で加算上限が変わります。2026年度は、5%・7%以上の賃上げについて、10人以上30人以下なら基本表の2倍、10人未満なら2.5倍の上限が加算されます。

賃金計算期間の始期と、就業規則・労働協約等の作成・変更日の両方が、交付申請日から事業実施予定期間の終期までに含まれる必要があります。最低賃金の改定をきっかけに賃上げする場合も、計算期間と規程変更の両方を確認してください。

最低賃金の発効日と賃金引上げ日|業務改善助成金と混同しない

当事務所が2026年8月17日に追加した愛知労働局への電話照会記録では、地域別最低賃金の発効日が10月1日のケースについて、働き方改革推進支援助成金の賃上げ加算では、賃金引上げ日を同日の10月1日として差し支えないとの回答を得ています。

最新の令和8年度支給要領も、最低賃金の改定が賃上げのきっかけであってもよいこと、賃金引上げの時点は引き上げられた賃金の計算期間の始期とすることを定めています。ただし、公式資料に「10月1日でよい」という一律の記載があるわけではなく、電話回答は照会時の前提に基づく実務上の参考です。

制度 地域別最低賃金が10月1日発効の場合 注意点
働き方改革推進支援助成金の賃上げ加算 10月1日を賃金引上げ日として差し支えないとの愛知労働局への照会記録 賃金計算期間の始期と規程の作成・変更時点の両方を、交付申請後から事業実施予定期間の終期までに収める
業務改善助成金 9月30日までに賃金を引き上げる 令和8年度の公式資料では、申請後から地域別最低賃金の発効日の前日まで。発効日当日の引上げは対象外

この電話照会は「賃金引上げ日」の取扱いだけに関するものです。働き方改革推進支援助成金の交付申請期限が2026年11月30日午後5時であること、予算により早期終了し得ること、事業実施期間や支給申請期限は変わりません。業務改善助成金の令和8年度の申請期間も、9月1日から「各都道府県の地域別最低賃金発効日の前日」または11月30日のいずれか早い日までであり、本助成金の期限とは別です。

愛知労働局の電話回答を、他の都道府県、他のコースや年度、発効日が10月1日以外のケースへそのまま広げてはいけません。実際の申請前に、対象年度・コースの最新資料と管轄労働局で、自社の賃金計算期間、規程変更日、交付申請日を伝えて再確認してください。

割増賃金率引上げ加算

2026年度は、所定割増賃金率の引上げによる加算があります。個別企業向けコースの主な区分は次のとおりです。

  • 25万円加算:月60時間以内の時間外労働に係る所定割増賃金率を5%以上引き上げる
  • 75万円加算:月45時間超〜60時間以内の所定割増賃金率を5割以上とし、交付申請後のいずれか1か月で時間外労働を労働者1人当たり10時間以上削減する

コースによって加算の適用条件が異なります。取引環境改善コースと団体推進コースにはこの2つの加算はありません。

申請から支給までのスケジュール

段階 個別企業向け3コース 取引環境改善・団体推進
交付申請 2026年11月30日午後5時まで。予算による早期終了あり
交付決定前 事業計画、規程・勤怠・賃金資料、見積書を準備。契約・発注・購入はしない
事業実施 交付決定日から2027年1月31日まで 交付決定日から2027年2月14日まで
支給申請 事業実施予定期間の終了日の翌日から30日後、または2027年2月5日のいずれか早い日 事業実施予定期間の終了日の翌日から30日後、または2027年2月26日のいずれか早い日

見積りは原則2以上を用意します。専門性が高く1社しか対応できない場合などは、市場参考価格等の追加資料を求められることがあります。見積の仕様と範囲をそろえておくと、価格の妥当性を説明しやすくなります。

中小企業で多い失敗と7つの事前チェック

  1. 成果目標から逆算したか
    欲しい設備を先に決めず、残業・休暇・休息時間の改善と結び付けます。
  2. 対象コースの現状要件を満たすか
    36協定、過去の時間外労働実績、現在のインターバル制度、対象業種を確認します。
  3. 年休管理簿と就業規則を整えたか
    10人未満でも年休管理簿の作成は必要です。10人以上の場合は交付申請前の届出も確認します。
  4. 交付決定前の契約を止めたか
    販売会社、購買担当者、経理担当者まで発注禁止を共有します。
  5. 就業規則・雇用契約書・勤怠・賃金台帳が一致するか
    当事務所の実務上、小さな不一致でも追加確認につながることがあります。端数処理と実際の振込額まで照合します。
  6. 賃上げの計算期間と規程変更日を確認したか
    いずれか一方ではなく、両方を交付申請後の対象期間内に収めます。
  7. 立替資金と納期を確認したか
    助成金は後払いです。支給申請前に支払いを完了し、事業実施期限に間に合う納期を確保します。

よくある質問

パソコンやタブレットは対象ですか?

原則対象外です。ただし、特定業務専用システムを稼働させるために必要なことが明らかな場合や、長時間労働恒常化特例の厳しい条件を満たす場合には対象候補となります。

リースやサービス利用料は対象ですか?

対象となる取組に必要な利用契約でも、事業実施予定期間を超える分の契約期間に係る費用は対象外です。契約期間、月割り金額、支払時期を確認してください。

過去に受給していても申請できますか?

過去の受給歴があっても対象になり得ます。ただし、一部を除き過去に選択したコースや成果目標と同じものを選べないことがあり、同一年度の交付決定は同一企業・団体等に対し1回です。

交付決定されれば受給が確定しますか?

いいえ。交付決定後に計画どおり改善事業を実施し、成果目標を達成し、期限内に支払いと支給申請を完了する必要があります。支給要件と実績報告の審査を経て、支給額が決まります。

どこに相談しますか?

交付申請の提出先は、企業の本店所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)です。各都道府県の働き方改革推進支援センターでも制度活用や働き方改革の相談を受け付けています。

その他の助成金も同時に比較したい方は、【2026年最新版】中小企業の補助金・助成金一覧|主要15制度と申請準備もご覧ください。

公的情報源と確認日

制度情報は2026年8月19日に確認しました。参照:厚生労働省「『労働条件等関係助成金』のご案内」「労働時間短縮・年休促進支援コース」「令和8年度支給要領(4月28日差替え版)」「勤務間インターバル導入コース」「業種別課題対応コース」「取引環境改善コース」「団体推進コース」「働き方改革推進支援助成金・業務改善助成金活用の手引き(2026年6月)」「令和8年度業務改善助成金の一部変更のお知らせ」。愛知労働局への電話回答は、当事務所の2026年8月17日付照会記録による実務上の参考であり、全国一律の書面回答ではありません。制度内容や受付状況は変更される場合があるため、実際の申請・賃上げ・契約前に最新の交付要綱・支給要領と管轄労働局で確認してください。

対象可能性は契約前に確認してください

働き方改革推進支援助成金は、設備の選定だけでなく、成果目標、就業規則、36協定、年休管理簿、勤怠、賃金、見積り、納期をひとつの計画として整える必要があります。

DHorse社会保険労務士事務所は、助成金の申請支援に加え、就業規則・雇用契約書・勤怠・賃金台帳の整合確認に対応しています。見積りや契約の前に、自社の対象可能性と準備順序を確認してください。

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