業務改善助成金の対象経費|設備・工事の活用事例と対象外【2026年】

業務改善助成金の対象経費として厨房設備・製造設備・システム・工事を検討する経営者向け記事のサムネイル

設備を入れて作業時間を減らしたい、受発注や在庫管理をシステム化したい、設備の設置に合わせて工事もしたい。こうした投資を検討する中小企業にとって、業務改善助成金は有力な選択肢です。

ただし、対象になるのは「事業に使う物」全般ではありません。申請事業場の生産性向上・労働能率増進に直接つながる設備投資等であり、交付決定前に発注すると対象外になります。造作費という経費区分があっても、単なる内装・快適化工事は対象外です。

この記事では、2026年8月10日時点の厚生労働省資料を基に、令和8年度(2026年度)の対象経費、対象外経費、設備・システム・工事の判断軸、労働局が公表する実在事例、当事務所の匿名化した申請支援経験を整理します。

結論:業務改善助成金の対象経費は5つの質問で判断

導入したい物を決める前に、次の5問へ順番に答えてください。

  1. 令和8年度の対象事業場か
    中小企業の規模、事業場内最低賃金、対象労働者、不交付事由を確認します。
  2. 生産性向上を数値で説明できるか
    現状と導入後の作業時間、処理量、人員、移動回数、不良率等を比較します。
  3. 現行年度の対象経費か
    過年度の事例ではなく、令和8年度の交付要綱・要領・Q&Aで確認します。
  4. 交付決定後に契約・発注できるか
    納期確保のための先行発注、手付金、交付決定前の納品も避けます。
  5. 全額を立て替え、証拠を残せるか
    助成金は後払いです。見積から納品、振込、写真まで一連の証拠が必要です。

5つすべてを満たして初めて対象候補です。設備名や経費区分だけで交付・支給が決まるものではありません。

令和8年度の対象条件・助成率・期限

対象経費を検討する前に、会社と事業場の基本条件を確認します。令和8年度は、主に次の要件を満たす必要があります。

  • 資本金または常時使用する労働者数のいずれかが中小企業基準以内で、みなし大企業ではない
  • 事業場内最低賃金が、令和8年度の改定後地域別最低賃金未満である
  • 雇入れ後6か月を経過し、申請日時点で雇用保険被保険者である労働者がいる
  • 解雇、賃金引下げ、労働保険料滞納等の不交付事由がない
  • 事業場内最低賃金を50円、70円または90円以上、申請後に1回で引き上げる

助成率は、引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら4分の5、1,050円以上なら4分の3です。助成額は対象経費×助成率と、コース・引上げ人数・事業場規模による助成上限額の低い方で決まり、最大上限は600万円です。

交付申請の受付開始は2026年9月1日です。申請期限は、事業場に適用される改定後地域別最低賃金の発効日前日または2026年11月30日のいずれか早い日です。賃上げも申請後から発効日前日までに行います。

制度全体の条件・助成上限・申請手順は、業務改善助成金の申請ガイドをご覧ください。愛知・岐阜・三重の改定額と発効予定日は、東海三県の最低賃金答申で確認できます。

対象経費9区分|対象候補・対象外・必要な説明

2026年7月版申請マニュアルでは、対象経費を9区分に整理しています。ただし、区分名に入るだけでは対象になりません。申請事業場の業務改善との関係を説明する必要があります。

経費区分 対象候補 対象外になりやすい支出・説明資料
謝金 外部専門家への助言等 通常業務の外注や内容不明の謝礼は避け、目的・回数・単価・成果物を明確にする
旅費 業務改善の取組に直接必要な移動 営業旅行や通常出張と分け、行程・目的・参加者・領収書を残す
借損料 機械・システムのリース、ライセンス等 対象年度の支払範囲、利用期間、対象事業場を契約書で示す
印刷製本費 業務改善に必要なマニュアル等 広告・販売促進物は対象外。部数・用途・配布先を明確にする
原材料費 自社施工等に必要な原材料 自社施工費は原則対象外。原材料費のみとし、原則2者以上の見積を取る
機械装置等購入費 厨房、製造、運搬、検査、清掃、POS等の設備 同等性能への買替え、通常の事務用品、使用頻度が極端に低い物は対象外になりやすい
造作費 対象設備の設置・稼働に直接必要な一定の工事 単なる内装、レイアウト変更、空調、執務室拡大、建物の取得・構築は対象外
経営コンサルティング経費 資格者・認定支援機関等による業務フロー改善 契約内容、実施者の要件、現状分析、提案書、実施結果、相見積を用意する
委託費 受発注・決済機能等を伴うシステム構築等 広告サイト制作、営業代行、単なる資料作成の外注と区別する

対象経費の下限は税抜10万円です。1点が10万円未満でも、それぞれが生産性向上に資する複数投資の合計が税抜10万円以上なら、対象となる可能性があります。

設備・システム・工事はどこまで対象になるか

厨房・製造・運搬設備

業務用食器洗浄機、冷凍冷蔵庫、スチームコンベクションオーブン、製造ライン、検査装置、フォークリフト、建設機械等は対象候補になり得ます。重要なのは設備名ではなく、どの作業を何分・何人分減らせるかです。

例えば食器洗浄機なら、「衛生的で便利」だけでは弱く、1日当たりの洗浄回数、現在の人数と時間、導入後の処理能力、削減時間、その時間を何の業務へ振り向けるかまで整理します。

POS・受発注・在庫・施工管理システム

POSレジ、顧客・在庫・帳票管理、販売管理、施工管理等のシステムも対象候補です。二重入力、会計待ち、在庫確認、現場と事務所の往復、手作業の転記をどの程度減らすかを説明します。

ホームページは、受発注または受注機能を付加する作成・改修等なら対象となる場合があります。一方、会社案内、採用、広告、販売促進を主目的とする制作は対象外です。

造作工事・内装工事

造作費という区分はありますが、内装工事なら何でも対象になるわけではありません。最新Q&Aは、動線確保のためのレイアウト変更、エアコン設置、執務室拡大、単なる内装改修等を対象外例に挙げています。

対象候補になるのは、導入する生産性向上設備を安全・適切に設置・稼働させるために不可欠で、設備と一体で効果を説明できる工事です。見積書では、設備本体、電源・給排水・固定等の必要工事、対象外の美装・快適化部分を分けます。

設備の更新・増設

壊れた設備を同等性能の新品へ交換するだけでは、生産性向上がないため対象外です。上位機種への更新であれば、処理速度、容量、設定時間、不良率、必要人員等を新旧仕様書と数値で比較し、改善を示せれば対象となる可能性があります。

既存設備の増設も、現在の処理能力では作業量に対応できず、増設により待ち時間や残業を減らせる等の説明ができれば対象候補です。

パソコン・スマートフォン・タブレット

PC等は通常申請で自動的に対象になるものではありません。原材料費高騰等の外的要因により、最近6か月平均の売上高総利益率または売上高営業利益率が前年同期より3%ポイント以上低下した物価高騰等要件の特例事業者は、新規購入が対象となる場合があります。

この特例でも既存PC等の入替えは対象外です。業務用高機能機器を動かすため、一般的な事務用PCでは満たせない仕様が必要な付属PCは、個別に対象となり得ます。

自動車・娯楽設備

令和8年度は、特殊用途自動車を除く自動車が対象外です。過年度に一定の特例で対象となり得た営業車、送迎車、貨物車を、そのまま今年度の計画へ流用できません。

特殊用途自動車も、8ナンバー等の形式だけで自動的に対象となるわけではなく、申請事業場での使用、生産性向上との関係、車両仕様、対象費用を確認します。また、令和8年度Q&Aは、全自動麻雀機、カラオケ機器、ゲーム機等を、娯楽性が高く業務効率化へ直接資すると認められない対象外例として挙げています。

労働局が公表する業務改善助成金の活用事例6選

ここからは、公的機関が公表する実際の設備導入事例を紹介します。いずれも過年度の制度に基づく事例を含むため、同じ設備が令和8年度も対象になることを保証するものではありません。参考にすべきは設備名より、課題と効果の結び付け方です。

1.宿泊・飲食サービス業:清掃・洗濯設備

愛媛労働局の事例では、ロボット掃除機と大容量洗濯乾燥機を導入しています。床清掃は1日約2時間から30分へ短縮され、洗濯では手作業の乾燥やアイロン掛けを省けるようになりました。設備費用は449,980円、助成額は333,000円と公表されています。

2.飲食店:食器洗浄機・冷凍冷蔵庫

業務用食器洗浄機により洗い直しや予洗いを減らし、洗浄時間を約半分へ短縮。冷凍冷蔵庫の性能向上により、毎日の仕入れを週1回程度へ減らし、仕込みも1日約2時間から約1時間になった事例です。設備費用は1,185,000円、助成額は948,000円でした。

3.卸売・小売業:販売管理システム

別々だった受注システムと販売管理を連携し、受注から納品までを一元管理した事例では、二重入力がなくなり、伝票入力を月約74.4時間削減しています。設備費用は3,300,000円、助成額は2,400,000円です。

4.医療関連事業:クリーンベンチと設置工事

クリーンベンチの導入と設置に伴う店舗改装により、以前は受け入れられなかった高度な処方へ対応し、月平均3〜5人程度の患者増と月6万〜10万円程度の収入増につなげた事例です。設備費用は710,000円、助成額は568,000円でした。

この例は「内装工事が対象」なのではなく、対象設備の導入と直接結び付く設置工事として計画された点が重要です。

5.製造業:製造ライン

排泥鋳込み製造ラインを導入した事例では、異物除去や不良防止を機械化し、1日当たりの生産量が約50個から約200個へ増加。不良品発生率も20%からほぼ0%へ改善しています。設備費用は3,804,000円、助成額は2,400,000円でした。

6.建設・土木業:ミニショベル等

ミニショベル、油圧ブレーカー、油圧チルトフォークを導入し、手作業の掘削を2時間から10分へ、土間コンクリートの斫り作業を1平方メートル当たり30分から5分へ短縮した事例です。倒木撤去等も3人・1時間から1人・15分になり、身体負担も軽減しました。

ほかにも、滋賀労働局は、介護報酬計算システム、専用乾燥機、施工管理システム、フォークリフト、自動裁断機等の活用実績を紹介しています。業種が違っても、現在の作業→投資→削減できる作業→数値効果という説明の順序は共通します。

当事務所の匿名化した申請支援経験

DHorse社会保険労務士事務所では、2026年8月10日時点で、業務改善助成金の申請代行を150件以上手がけてきました。これは申請代行件数であり、交付決定件数、支給決定件数、入金件数を示すものではありません。

飲食店の業務用冷蔵庫やスチームコンベクションオーブン等の厨房設備、業種固有の特殊な車両等、幅広い設備について支援経験があります。一方、過去に支援した設備と同じでも、現在の対象可否は別の判断です。

過去の対象事例を今年度へ流用しない

当事務所には、過去に麻雀店の全自動麻雀卓導入を支援した経験があります。しかし、令和8年度Q&Aでは全自動麻雀機が対象外例に明記されています。一般の営業車・送迎車も今年度は対象外となり、車両中心の計画を取りやめた匿名化事例があります。

「以前は通った」「同業者が使った」という情報だけで発注しないことが重要です。年度の要領と個別設備の効果を確認し、対象外なら別の機械・システムへ計画を組み替えます。

賃金資料は数円単位まで合わせる

匿名化した支援案件では、実労働時間から計算した賃金額と実支給額に数円単位の差があり、確認を受けたことがあります。差が小さいから問題ないと判断せず、就業規則、勤怠記録、賃金台帳、給与明細、振込額、端数処理まで照合します。

審査長期化を資金・納期へ織り込む

当事務所の支援案件では、2025年10月頃に申請し、2026年7月下旬時点でも交付決定に至っていない案件が多数ありました。これは当事務所の匿名化した経験であり、全国平均ではありません。

交付決定前は発注できない一方、交付決定後は事業完了期限までに納品・支払を終える必要があります。早期申請、見積有効期限、交付決定後の納期、立替資金、追加資料へ対応する担当者を同時に準備します。

申請から受給までの流れ

  1. 対象事業場と労働者を確認する
    中小企業基準、事業場内最低賃金、雇用保険、雇入れ期間、不交付事由を確認します。
  2. 現状工程を数値化する
    作業別の時間、人数、処理量、ミス、不良、移動等を測ります。
  3. 設備仕様と見積をそろえる
    原則2者以上の見積を取り、比較できない場合は理由と価格の妥当性を説明します。
  4. 賃上げ計画・業務改善計画を作成して交付申請する
    事業場所在地を管轄する都道府県労働局へ提出します。
  5. 申請後に賃上げする
    改定後地域別最低賃金の発効日前日までに、就業規則等を改定・適用して1回で引き上げます。
  6. 交付決定後に契約・発注・導入・支払を行う
    交付決定通知前は、契約、発注、納品、手付金を含む支払を行いません。
  7. 事業実績報告と支給申請を行う
    賃金台帳、就業規則、納品書、請求書、振込記録、設備写真等を提出します。
  8. 額の確定・支給決定後に入金される
    交付決定額がそのまま入金されるとは限りません。対象経費と実施結果の審査後に額が確定します。
  9. 賃上げ後の状況報告を提出する
    支給後も所定の時点まで賃金・雇用状況を報告します。

事業完了期限は原則として交付決定の属する年度の1月31日です。やむを得ない理由が事前に認められれば3月31日までとなる場合がありますが、自動的な延長ではありません。

対象経費で失敗しない申請前チェックリスト

  • 対象設備を使う事業場と、恩恵を受ける労働者が明確か
  • 現状と導入後の作業時間・人数・処理量を同じ単位で比較したか
  • 新旧設備の仕様、能力、価格を資料で比較したか
  • 令和8年度Q&Aの対象外例に該当しないか
  • 設備本体と工事・オプション・送料等の内訳が分かるか
  • 原則2者以上の相見積を同じ仕様で取ったか
  • 見積、契約、発注、納品、請求、振込、写真を同じ案件として追跡できるか
  • 交付決定前に契約・発注・納品・支払をしない社内ルールを共有したか
  • 事業完了期限までに納品・支払できるかを販売事業者へ確認したか
  • 助成金入金まで設備代等を全額立て替えられるか
  • 設備、仕様、金額、納期を変える前に労働局へ相談する担当者を決めたか
  • 賃金台帳、勤怠、給与明細、振込額、就業規則が一致しているか

よくある質問

内装工事や店舗改装は対象経費になりますか?

単なる美装、快適化、レイアウト変更、エアコン設置等は対象外です。生産性向上設備の設置・稼働に不可欠な造作で、設備と一体の効果を示せる工事は対象となる可能性があります。設備本体と必要工事、対象外部分を見積で分け、申請前に労働局へ確認してください。

パソコンやタブレットは対象ですか?

通常は対象になりません。物価高騰等要件を満たす特例事業者の新規購入や、業務用高機能機器の要求仕様を満たすために不可欠な付属PC等は、個別に対象となる場合があります。既存PC等の入替えは特例でも対象外です。

古い設備の買替えは対象ですか?

同等性能への買替えは対象外です。上位機種へ更新し、処理時間、容量、人員、不良率等の改善を仕様書と数値で説明できる場合は対象候補になります。

複数の設備をまとめて申請できますか?

相互に関連しない設備でも、それぞれが生産性向上・労働能率増進に資するなら合算できる場合があります。1点10万円未満でも、対象となる複数投資の合計が税抜10万円以上なら対象候補です。

リースや保守料は対象ですか?

リース、ローン、ライセンス、保守契約等は、助成実施年度に支払う経費が対象です。複数年分を年度内に支払う場合は、助成実施年度を含む3年分までが対象となる扱いです。ただし、自動車のリース・ローン・保守等は対象外です。

助成金はいつ入金されますか?

設備導入時ではありません。交付決定後に事業を実施し、全額を支払い、実績報告・支給申請を行います。労働局が内容を審査して額を確定し、支給決定した後に入金されます。審査期間は申請内容や労働局の状況で異なります。

まとめ:設備名ではなく「効果・現行対象・順序」で判断

業務改善助成金の対象経費を判断するときは、導入したい設備の名前だけで考えないことが大切です。現状の作業を数値化し、投資による改善を説明し、令和8年度の対象範囲と交付決定後着手の順序を確認してください。

特に、造作工事、PC、設備更新、自動車、娯楽設備は、過年度事例や一般的なイメージと現行Q&Aの取扱いが異なる場合があります。見積や発注の前に、対象事業場・賃金・設備・工事・資金・納期を一体で確認することが安全です。

DHorse社会保険労務士事務所では、業務改善助成金の対象可能性診断、賃金の再計算、就業規則・勤怠・賃金台帳の整合確認、設備計画、見積、申請から実績報告まで支援しています。

自社の設備・システム・工事が対象候補か、発注前に確認したい経営者の方は、業務改善助成金の無料相談・無料診断を申し込むよりご相談ください。

公的情報源と確認日

制度情報は2026年8月10日に確認しました。参照:厚生労働省「業務改善助成金」「令和8年度業務改善助成金のご案内」「業務改善助成金 申請マニュアル(2026年7月版)」「業務改善助成金Q&A(2026年7月7日作成)」、愛媛労働局「愛媛県内の設備導入の事例集」、滋賀労働局「業務改善助成金の活用実績」。受付状況、地域別最低賃金の発効日、対象経費、事業完了期限等は変更される場合があります。実際の申請・賃上げ・発注前に、最新の交付要綱・要領・Q&Aと管轄労働局で個別要件をご確認ください。

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