「厨房設備を入れたい」「店舗を改装して新しい顧客層を呼び込みたい」「ホームページとチラシで販路を広げたい」。こうした投資を検討するとき、小規模事業者持続化補助金の対象経費になるかは、設備や工事の名前だけでは判断できません。
2026年の一般型・通常枠第20回では、自社の経営計画に基づく販路開拓等に必要な経費であることが出発点です。生産性向上の取組も対象になり得ますが、販路開拓等と併せて行う必要があります。
この記事では、第20回公募要領第8版、2026年に公表された中小機構の実在事例、株式会社DHorseの承認済み・匿名化した支援経験をもとに、設備導入、内装工事、広報、ウェブ等の対象可否と申請から受給までの注意点を整理します。
結論:小規模事業者持続化補助金の対象経費は4つの質問で判断
投資の候補が決まったら、見積を依頼する前に次の4項目を確認してください。
- 自社は小規模事業者に当たるか
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は常時使用する従業員5人以下、宿泊業・娯楽業と製造業その他は20人以下が基本です。 - 新しい顧客・市場・売り方につながるか
「設備が古いから交換する」ではなく、誰にどのような価値を提供し、客数・客単価・売上等をどう伸ばすかを説明します。 - 交付決定まで発注・契約・支払いを待てるか
見積取得は準備として行いますが、原則として交付決定前の発注、契約、購入、前払いは対象外です。 - 全額を立て替え、証拠を残せるか
補助金は後払いです。納品・支払い後の実績報告に備え、見積書から振込記録、写真、成果物まで揃える必要があります。
「公募要領の対象例に載っている=必ず対象・採択」ではありません。
同じオーブンや店舗改装でも、計画との関係、仕様、発注時期、支払方法、証拠書類によって判断は変わります。採択後も見積等の確認を経て交付決定を受けるまでは着手できません。
対象事業者・補助率・第20回の期限
| 確認項目 | 一般型・通常枠 第20回の内容 |
|---|---|
| 商業・サービス業 (宿泊業・娯楽業を除く) |
常時使用する従業員5人以下 |
| 宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員20人以下 |
| 製造業その他 | 常時使用する従業員20人以下 |
| 通常枠 | 補助率2/3、補助上限50万円 |
| 申請受付 | 2026年11月5日~12月15日17時 |
| 事業支援計画書(様式4) | 発行受付締切は2026年12月4日 |
| 採択発表 | 2027年3月頃予定 |
インボイス特例は50万円、賃金引上げ特例は150万円、両方の要件を満たす場合は200万円が通常枠の上限に上乗せされます。賃金引上げ特例のうち赤字事業者は補助率3/4です。特例は上限が自動的に受け取れる制度ではなく、対象経費と補助率から算出した範囲で審査されます。
対象法人、過去採択歴、特例、必要書類など制度全体は、小規模事業者持続化補助金・第20回の対象と申請の流れで詳しく説明しています。
対象経費に共通する3条件
第20回公募要領では、補助対象経費に次の3条件を求めています。
- 使用目的が補助事業の遂行に必要なものと明確に特定できる
- 交付決定日以降に発生し、補助事業期間中に支払いが完了する
- 見積書、請求書、振込記録等で支払金額を確認できる
たとえば、新商品を製造して新規顧客へ販売するためのオーブンは対象候補です。一方、従来と同じ商品を同じ顧客へ提供するために、故障したオーブンを同等品へ交換するだけなら「通常の事業活動」「単なる取替え更新」と判断される可能性が高くなります。
経費の可否を決めるのは「何を買うか」だけでなく、「何の課題を解決し、どの販路を広げるか」です。
8つの対象経費|対象例・対象外例・必要な証拠
第20回の対象経費は次の8区分です。下表の対象例も、経営計画との関係や実施条件を満たした場合の候補であり、個別の対象可否を保証するものではありません。
| 経費区分 | 対象になり得る例 | 対象外・注意例 | 主に残す証拠 |
|---|---|---|---|
| ①機械装置等費 | 高齢者向け椅子、ベビーチェア、ショーケース、鍋、オーブン、冷凍冷蔵庫、製造・試作機械 | パソコン等の汎用品、一般車両、単なる更新、修理、販売・貸与用設備 | 仕様書、見積書、発注・納品・検収書、設置前後写真 |
| ②広報費 | チラシ、カタログ、商品広告、看板、SNS広告、販促用画像・動画 | 会社案内だけの広告、求人広告、名刺、未配布分。広報費だけの申請は不可 | 広告原稿、配布・掲載実績、成果物、請求書 |
| ③ウェブサイト関連費 | 商品販売サイト、ECサイト、顧客管理システム、アプリ、特定業務用ソフト | 一般事務用ソフト、既存ソフト更新料、期間内に公開・運用しないサイト。単独申請は不可 | 仕様書、公開URL、画面、納品物、契約書、運用実績 |
| ④展示会等出展費 | 展示会・商談会の出展料、運搬費、通訳・翻訳料 | 販売だけで販路開拓につながらないもの、期間外の展示会、飲食費 | 出展申込、請求書、会場写真、商談記録 |
| ⑤旅費 | 計画に記載した展示会等への公共交通費、必要な宿泊費 | 通常営業、視察・セミナー参加、日当、ガソリン・駐車場・タクシー代 | 旅程、領収書、出張報告、商談・出展記録 |
| ⑥新商品開発費 | 試作品の原材料、新しい包装パッケージの設計・デザイン | 販売する完成品の仕入れ、未使用材料、既存パッケージの増刷 | 受払簿、試作品写真、設計・デザイン成果物、市場調査結果 |
| ⑦借料 | 補助事業に直接必要な機器・設備のリース・レンタル、PRイベント会場 | 通常の事務所家賃、通常生産にも使う機器、期間外分 | 見積書、契約書、使用記録、期間按分の計算 |
| ⑧委託・外注費 | 店舗改装、バリアフリー、利用客向けトイレ、一定のガス・水道・排気工事 | 単なる移転工事、住宅部分、営業代行、内訳不明の諸経費、応募書類作成費 | 図面、工事内訳、契約書、完了報告、施工前後写真 |
広報費とウェブサイト関連費は、それぞれその経費だけでは申請できず、各区分の補助金交付申請額は30万円(税込)が上限です。ホームページ制作を外部へ委託する場合も、委託・外注費ではなくウェブサイト関連費へ計上します。
設備導入は「買う物」より販路開拓とのつながりが重要
厨房設備・製造設備が対象候補になる計画
公募要領には、生産販売拡大のための鍋、オーブン、冷凍冷蔵庫、新たなサービスのための製造・試作機械等が対象例として挙げられています。計画では、次の順でつなげます。
- 既存顧客や商圏の課題・新しい需要を把握する
- 新商品、新メニュー、新サービスの内容を決める
- その提供に必要な仕様・能力を特定する
- 販売方法、価格、客数、売上高・売上総利益の見込みを数値化する
- 設備導入後、補助事業期間内に実際の販路開拓を行う
設備を導入しても、補助事業期間内に新商品等の販売や販促を行わなければ、計画した取組を実施したと確認できません。納期だけでなく、試作、撮影、メニュー作成、広告、販売開始まで逆算してください。
対象外になりやすい設備
- 古くなった設備の単なる買替え・修理
- パソコン、タブレット、事務用プリンター、モニター、ルーター等の汎用品
- 自動車、フォークリフト、キッチンカー等の一般車両
- 販売・レンタルするための設備や商品
- 顧客へ有償貸与することを目的とした設備
発注総額1件が50万円(税込)を超える機械装置等は、原則として2者以上から見積を取得します。中古品は購入単価50万円(税抜)未満に限られ、金額にかかわらず2者以上の中古品販売事業者から同等品の見積が必要です。個人やオークションからの購入は認められません。
作業時間削減や人手不足対策が主目的で、販路開拓との結び付きが弱い場合は、中小企業省力化投資補助金(一般型)など別制度も比較してください。
内装工事・バリアフリー化の対象可否
内装工事は委託・外注費の対象候補です。第20回公募要領では、店舗改装・バリアフリー化、利用客向けトイレの改装、製造・生産強化のためのガス・水道・排気工事などが例示されています。
対象候補になる考え方
- 高齢者や乳幼児連れの顧客を受け入れるため、段差解消や通路幅の確保を行う
- 新サービスの提供スペースを設け、既存顧客とは異なる層を獲得する
- 新商品を製造・販売するため、厨房や工場のガス・水道・排気設備を整える
- 販路開拓と併せた業務効率化として、従業員の作業導線を改善する
「きれいにしたい」ではなく、改装前の課題、対象顧客、改装後の利用方法、座席数・回転率・予約枠・売上等の変化を説明します。工事見積は「内装工事一式」「諸経費一式」にせず、解体、造作、電気、給排水、設備設置などの仕様・数量・単価を分けてください。
対象外になりやすい工事
- 単なる店舗移転を目的とした旧店舗・新店舗の解体・建設
- 販路開拓や業務効率化と関係しない修繕・原状回復
- 住宅兼店舗の住宅部分
- 建物の増築・増床等で不動産取得に当たるもの
- 設備を第三者へ長期間貸す事業のための改装
店舗改装で50万円(税抜)以上の外注工事を行う場合などは、処分制限財産となることがあります。補助金受給後も、目的外使用、譲渡、廃棄等に事前承認が必要となる可能性があるため、賃貸物件では貸主との契約期間や退去予定も確認してください。
2026年に公表された公式活用事例4選
次の事例は、中小機構が2026年に公表した実在事例です。費目区分は公表内容を現行第20回の区分に照らした参考整理であり、同じ支出が現在の公募で必ず対象になることを意味しません。
1.日本料理店:椅子で年配客の顧客体験を改善
主要顧客である50~80代の満足度向上を目的に、長時間でも疲れにくい椅子を導入した事例です。顧客の滞在時間と満足度が高まり、客単価と来店頻度の向上につながりました。
判断のポイント:「椅子を買う」ことではなく、既存の主要顧客が感じていた不便を解消し、再来店・追加注文につなげる顧客価値が明確です。現行要領では、高齢者向け椅子は機械装置等費の対象例にも挙げられています。
2.クラフトアイス事業者:ECから実店舗へ販路を拡大
EC中心だった事業者が実店舗を開業し、店舗用什器・設備を整備した事例です。商品を直接体験できる売り場を持つことで、ブランド価値の向上と顧客層の拡大につなげました。
判断のポイント:オンライン販売の単なる補完ではなく、実店舗という新しい販売チャネルと顧客接点をつくっています。什器・設備・内装は、それぞれの仕様と役割を分けて計画・見積へ落とし込む必要があります。
3.美容室:プライベートサロンで新サービスを提供
美容室が隣接物件を活用し、プライベートサロンを新設した事例です。まつげパーマ専用設備、施術チェア、家具、鏡などを導入し、子ども連れの顧客等が落ち着いて施術を受けられる新しい空間を整えました。中小機構の記事では、補助事業後の売上が約14%向上したと紹介されています。
判断のポイント:顧客ニーズ、専用サービス、設備・空間、売上効果が一つの計画でつながっています。賃料、設備、工事のすべてが一律に対象となるわけではないため、経費区分と対象期間を分けて確認します。
4.海上警備サービス事業者:ウェブとパンフレットで営業を強化
海運会社向けサービスの販路開拓を目的に、ウェブサイトとパンフレットを制作し、新規の大口案件獲得と人員拡充につなげた事例です。
判断のポイント:会社紹介を作るだけでなく、対象顧客と提供サービスを明確にした営業導線として活用しています。現行第20回では、ウェブサイト関連費と広報費はそれぞれ単独申請できず、補助金交付申請額の上限にも注意が必要です。
株式会社DHorseの匿名化した支援経験
同一経営グループの株式会社DHorseでは、2026年8月10日時点で、小規模事業者持続化補助金の申請サポートを400件以上行ってきました。これは申請サポート件数であり、採択件数や受給件数を示すものではありません。
公開可能な範囲で匿名化すると、次のような取組の相談・申請準備を支援してきました。
- 飲食店の店舗改装や厨房設備の導入を通じた新規顧客獲得
- 接客店舗や工場等のバリアフリー化を通じた顧客体験の向上
- ホームページやチラシの作成・配布を通じた販路拡大
支援時に重視するのは、対象経費の候補を並べることより、事業計画と投資を一致させることです。たとえば厨房設備なら、新メニューの顧客、価格、1日の製造数、販売チャネル、設備能力をつなげます。バリアフリーなら、対象顧客の困りごと、改装範囲、来店可能人数、広報方法を具体化します。
また、当グループが申請サポートを行った匿名の事業者で、補助金受給後に計画どおり設備・システムや新たな取組を運用しているか等の確認を求められた事例があります。すべての採択事業者に一律の調査が行われるという意味ではありませんが、入金後も計画・証拠・実際の運用を一致させることが重要です。
申請から受給までの流れ
- GビズIDプライムを取得する
申請にはGビズIDプライムが必要です。登録情報も早めに確認します。 - 対象者と投資目的を確認する
従業員数、法人形態、過去採択歴、他制度との重複を確認し、顧客課題から投資を決めます。 - 経営計画・補助事業計画と資金繰りを作る
市場、顧客、自社の強み、取組、売上効果、経費、全額立替資金を整理します。 - 見積・仕様・納期を確認する
申請前の見積取得は可能です。相見積の要否、対象外部分、交付決定後の納期を確認します。 - 商工会・商工会議所へ様式4を依頼する
第20回の発行受付締切は2026年12月4日です。所在地を管轄する支援機関へ余裕を持って依頼します。 - 事業者本人が電子申請する
申請締切は2026年12月15日17時です。郵送申請はできません。 - 採択後、見積等を提出して交付決定を待つ
採択は発注許可ではありません。価格の妥当性や経費内訳の確認を受けます。 - 交付決定後に発注・契約し、事業を実施する
納品、検収、支払い、販促・販売まで期間内に実施し、証拠を残します。 - 実績報告を行う
計画どおりの取組と支出を、書類・写真・成果物で報告します。 - 額の確定後に請求し、入金を受ける
申請額の満額が確定するとは限りません。審査・修正対応の期間も資金繰りに入れます。 - 事業効果を報告し、書類を保存する
事業終了1年後の報告や、関係帳簿・証拠書類の5年間保存に対応します。
申請前の注意点チェックリスト
- 発注日:交付決定通知書の交付決定日以降か
- 見積:商品名、仕様、数量、単価、工事内訳が分かるか
- 相見積:1件50万円超(税込)の機械装置等や中古品の要件を満たすか
- 支払い:事業者名義の銀行振込を基本に、期間内に引落しまで完了するか
- 現金:1取引10万円(税抜)超の現金払いになっていないか
- 証拠:見積、発注、契約、納品、検収、請求、振込、写真、成果物を保存できるか
- 変更:設備、業者、金額、工期を自己判断で変更していないか
- 処分制限:50万円(税抜)以上の設備・ウェブ・改装等の管理を続けられるか
- 第三者支援:支援者と支援金額を申告し、GビズIDの認証情報を共有していないか
第三者の申請サポートを利用しても、経営計画を策定し、内容を理解して申請する主体は申請事業者本人です。支援を受けた事実や費用を申告しない場合、不採択・交付決定取消しにつながる可能性があります。
よくある質問
パソコンやタブレットは対象経費ですか?
通常業務でも幅広く使えるパソコン、タブレット、事務用プリンター、モニター、ルーター等は対象外です。補助事業専用と説明するだけでは、汎用性の問題は解消されません。
ホームページ制作だけで申請できますか?
できません。ウェブサイト関連費だけの申請は不可で、ほかの経費と組み合わせる必要があります。同区分の補助金交付申請額は30万円(税込)が上限です。補助事業期間中に公開・運用しなかったページも対象外です。
既存設備の修理や買替えは対象ですか?
修理費や、老朽化した設備の単なる取替えは対象外です。一方、新しい商品・サービスや販路を実現するため、既存設備とは異なる機能・能力が必要な場合は対象候補になります。違いと必要性を仕様・計画で説明してください。
内装工事ならすべて対象になりますか?
なりません。店舗改装・バリアフリー等は対象例ですが、単なる修繕・移転、住宅部分、一定の不動産取得等は対象外です。対象部分と対象外部分を工事内訳や図面で分けます。
採択されたらすぐ発注できますか?
採択だけでは発注できません。採択後に見積等の確認を受け、交付決定通知書に記載された交付決定日以降に発注・契約します。
補助金はいつ入金されますか?
事業を実施して全額を支払い、実績報告の審査を受け、補助金額が確定した後に請求して入金されます。固定日を前提にせず、設備代・工事代を立て替える資金を準備してください。
申請サポートを利用できますか?
株式会社DHorseでは、制度選定、対象経費の整理、事業計画のブラッシュアップ、申請準備のサポートを提供しています。採択・受給を保証するものではなく、申請操作と最終確認は申請事業者本人に行っていただきます。
まとめ:投資の目的・対象経費・資金繰りを一緒に確認
小規模事業者持続化補助金で設備導入や内装工事を検討するときは、次の順で準備してください。
- 新しい顧客・市場・売り方と売上効果を決める
- 必要な設備・工事・広報を8経費区分へ分ける
- 交付決定後の発注、納期、全額立替資金、証拠管理を確認する
対象経費は個別判断が多く、設備と工事、ウェブ、広告が複数区分にまたがる計画ほど、申請前の整理が重要です。
小規模事業者持続化補助金の対象経費について無料相談・お問い合わせをする
制度情報は2026年8月10日に確認しました。参照:中小企業庁「第20回公募要領公開のお知らせ」、小規模事業者持続化補助金事務局「第20回公募 公募要領(第8版)」「商工会議所地区公式サイト」、中小機構「小規模事業者持続化補助金・優良事例発表会」「持続化補助金で実現した美容室の新たな挑戦」。第8版時点で第20回のガイドブック、参考資料、FAQ、申請操作手引きは準備中です。申請時は公式サイトで最新版をご確認ください。実在事例・過去支援事例と同じ取組でも、現在の対象可否や採択を保証するものではありません。







