事業承継・M&A補助金|対象条件・申請から受給までの流れ・注意点【2026年】

事業承継を機に設備投資などの新たな取組を検討する中小企業経営者向け記事のサムネイル

事業承継を機に設備を入れ替えたい、新しい商品・サービスを始めたいと考えたとき、「事業承継・M&A補助金を使えるのか」「承継してから申請すればよいのか」と迷う経営者は少なくありません。

結論からいうと、事業承継促進枠では承継を実行する前の申請が重要です。後継者、承継方法、会社・事業の年数、新たな取組、資金計画など複数の条件を満たす必要があります。

この記事では、2026年7月31日時点で最新の15次公募・事業承継促進枠(公募要領Ver.1.0)を基に、対象条件、補助率・上限、対象経費、申請から受給までの流れ、注意点を経営者向けに整理します。

2026年7月31日時点の受付状況

最新の15次公募は、2026年7月24日17時で受付を終了しています。中小企業庁の公募一覧と公式サイトでは、次回公募の案内を確認できません。以下の条件・金額は15次公募を基準にした準備用の情報です。次回申請時には必ず最新公募要領を確認してください。

結論:承継する前に5項目を確認

次の5項目をすべて満たせるかが、事業承継促進枠を検討する最初の判断基準です。

  1. 要件を満たす後継者が決まっている
    親族、または対象会社・事業で一定の役員・勤務経験がある後継者を選定していることが必要です。
  2. 会社・事業の年数などの対象条件を満たす
    法人は原則3期分の決算・申告、個人事業は原則として開業・青色申告から5年の実績が必要です。
  3. 申請後の対象期間内に実質的な承継を行う
    経営権だけでなく、株式・持分等の所有権も移す計画が必要です。15次公募では申請締切前の承継は対象外でした。
  4. 後継者が新たな取組を主導する
    引き継ぐ人材、技術、顧客基盤、設備等を活用し、生産性を高める5年間の計画を作ります。
  5. 交付決定まで発注せず、入金まで立て替えられる
    補助金は後払いです。交付決定前の発注・契約・支払いは対象外となり、補助事業の経費はいったん自社で支払います。

どれか1つでも不明な場合は、承継手続や設備契約を進める前に、公募要領と事務局案内に基づいて確認しましょう。

事業承継・M&A補助金と事業承継促進枠

事業承継・M&A補助金は、事業承継やM&Aに伴う設備投資、専門家活用、経営統合等を支援する補助金です。15次公募では、取組内容に応じて4つの枠が設けられました。

主な対象 主な支援内容
事業承継促進枠 今後、親族内承継・従業員承継等を予定する事業者 後継者が主導する設備投資等
専門家活用枠 M&Aの買い手・売り手等 FA・仲介、デューデリジェンス等の専門家費用
PMI推進枠 M&A後の経営統合を進める事業者 PMIの専門家活用や事業統合投資
廃業・再チャレンジ枠 事業承継・M&Aに伴う廃業等を行う事業者 一定の廃業費用

この記事で詳しく扱う事業承継促進枠は、主に親族内承継・従業員承継向けです。「事業承継・M&A補助金」という名称でも、第三者M&Aの仲介費用やM&A後の統合投資とは枠が異なります。目的に合わない枠を選ばないことが第一歩です。

対象条件をチェック

15次公募の主な条件を、経営者が確認しやすい順に整理します。実際には、公募要領に定める対象者要件をすべて満たす必要があります。

確認項目 15次公募の主な条件
申請者 日本国内で事業を営む中小企業者等。原則として承継前の被承継者が申請する
後継者 対象会社で役員・雇用経験を通算3年以上有する者、または被承継者の親族で対象会社・事業の代表経験がない者等
事業実績 法人は原則3期分の決算・申告が完了。個人事業は開業届・青色申告承認申請書の提出から原則5年経過
承継方法 法人は同一法人内の代表者交代、個人事業主は被承継者の廃業と承継者の開業を伴う事業譲渡
承継時期 15次は2026年7月24日から2031年7月23日までに完了する計画
権利の移転 経営権と、株式・持分等の所有権の双方を被承継者から承継者へ移す
新たな取組 後継者が主導し、引き継ぐ経営資源を活用する生産性向上等の取組
数値計画 5年間で付加価値額または1人当たり付加価値額を年率3%以上向上させる計画

個人事業主の承継では、被承継者と承継予定者による共同申請が必要です。法人・個人のいずれも、補助対象となる新たな取組は承継予定者が主体となって実施します。

中小企業者等の規模要件

中小企業者等の基準は業種、資本金、従業員数で判断します。主な基準は次のとおりです。

業種 資本金または出資総額 常時使用する従業員数
製造業その他 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下

一部の業種には別基準があります。また、大企業に100%保有される法人、みなし大企業、直近3年の課税所得の年平均額が15億円を超える事業者等は対象外です。

小規模事業者等なら補助率が変わる

15次公募で小規模事業者等に該当する基準は、製造業その他が従業員20人以下、商業・サービス業が5人以下、宿泊業・娯楽業が20人以下でした。小規模事業者等に該当するかによって補助率が変わるため、従業員数の数え方も確認が必要です。

対象外になりやすい承継

  • 経営権・所有権の移転を伴わない、名目上の代表者交代
  • 承継後に旧代表と新代表が複数代表となる計画
  • グループ内の事業再編
  • 物品・不動産等のみを保有する事業の承継
  • フランチャイズ契約や、実質的なのれん分け
  • 休眠会社、事業実態のない会社の代表者交代
  • 事業承継が客観的に確認できないケース

「親族へ代表者を変えるだけ」では足りません。誰から誰へ、いつ、どの権利と経営資源を移し、後継者がどのように経営を担うのかを、書類と実態の両方で説明できる必要があります。

補助率・補助上限・自己負担

項目 15次公募・事業承継促進枠
補助率 小規模事業者等は2/3以内、それ以外は1/2以内
補助下限 100万円
通常の補助上限 800万円
3%以上の賃上げを行う場合の上限 1,000万円。800万円超の部分は1/2以内
廃業費の併用 一定の場合に300万円以内を上乗せ
支払方法 事業完了後の精算払い

例えば、小規模事業者等が補助対象経費900万円を申請し、すべて認められた場合、補助率2/3では600万円、自己負担は300万円です。ただし、消費税等の対象外部分、対象外経費、資金調達費用なども自己負担になります。

上限額がそのまま支給されるわけではありません。申請額、交付申請、実績報告、確定検査を経て、実際の補助額が決まります。

賃上げで上限を引き上げる場合

15次では、補助事業が完了した年度の翌年度に、従業員1人当たり給与支給総額を3%以上増やす計画を申請時までに従業員等へ表明し、達成することで、上限を800万円から1,000万円へ引き上げられました。

未達成または事業計画期間中に水準を維持できない場合、上限引上げ額の最大200万円を返還する可能性があります。人員計画、賞与、手当、採用・退職の影響まで検討してから選択しましょう。

補助金は後払い

補助金は、設備導入等の費用を先に自社で支払い、補助事業終了後に実績報告・確定検査・請求を経て入金されます。設備代、改築費、外注費等をいったん全額支払える自己資金またはつなぎ資金が必要です。

借入を予定する場合は、採択後ではなく、申請準備の段階から金融機関へ相談する方が安全です。

新たな取組と対象経費

対象になるのは、設備を買うこと自体ではありません。後継者が、引き継ぐ経営資源を使って生産性を高める取組であることが中心です。

対象になり得る取組の考え方

  • 先代から引き継ぐ技術と顧客基盤を使い、新商品を製造する設備を導入する
  • 既存店舗の強みを生かし、後継者が新サービスを提供するために改装・設備導入を行う
  • 承継する知的財産やノウハウを活用し、新たな販路へ展開する
  • 引き継ぐ人材と設備を組み合わせ、生産工程を改善して付加価値を高める

「新しい機械が欲しい」から計画を始めるのではなく、「どの経営資源を引き継ぎ、後継者が何を変え、5年間で付加価値をどう高めるか」を先に整理します。

15次公募の対象経費

経費区分 概要
設備費 国内の店舗・事務所等の工事、国内で使用する機械器具等
産業財産権等関連経費 補助事業に必要な特許権等の取得に要する弁理士費用等
謝金 補助事業のために依頼した専門家等への謝金
旅費 販路開拓等を目的とした国内外出張の交通費・宿泊費
外注費 補助事業の一部を第三者へ請負で外注する費用
委託費 補助事業の一部を第三者へ委任する費用

対象外になりやすい支出

  • 交付決定前に契約・発注・支払いをした経費
  • 被承継者へ支払う土地・資産等の譲受費用
  • 売上原価に相当すると判断される経費
  • 補助事業との必要性を説明できない設備・外注
  • 補助事業期間内に支払いまで完了しない経費
  • 見積、契約、納品、請求、振込等の証拠書類がない支出
  • 同一・類似事業または同一経費で国の他の補助金等と重複する支出

原則として2者以上の相見積が必要です。「この会社からしか買えない」という理由書を出せば必ず認められるわけではありません。相見積が不要となる公式条件に該当するかを事前に確認します。

申請から受給までの流れ

  1. 次回公募と対象枠を確認する
    公募要領、FAQ、交付規程を読み、事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠等のどれに合うかを確認します。
  2. 後継者と承継日程を決める
    後継者の経験、在籍状況、株式・持分、代表者交代、個人事業の廃業・開業などを整理します。
  3. GビズIDプライムを取得する
    申請・発行には通常1週間程度、混雑時は3週間程度必要となる場合があります。次回公募前に取得しておきます。
  4. 認定経営革新等支援機関へ相談する
    事業承継計画の蓋然性について確認を受け、確認書の発行を依頼します。締切直前では間に合わない可能性があります。
  5. 事業承継計画・補助事業計画を作る
    引き継ぐ経営資源、後継者の役割、新たな取組、5年間の付加価値計画、実施体制を整理します。
  6. 必要書類と相見積を準備する
    決算書、確定申告書、登記事項証明、後継者の経験を示す書類、承継計画、認定支援機関の確認書、見積等をそろえます。
  7. Jグランツで公募申請する
    申請事業者本人が内容を理解し、確認して提出します。第三者へ申請を丸投げすることはできません。
  8. 採択後、交付申請を行う
    採択は発注許可ではありません。見積等を用いて交付申請を行い、交付決定を待ちます。
  9. 交付決定後に発注・契約し、事業を実施する
    計画どおりに設備導入等を進め、補助事業期間内に納品・検収・支払いまで完了します。
  10. 実績報告を提出する
    事業内容と経費の証拠書類を提出します。計画変更がある場合は、実行前に事務局の承認要否を確認します。
  11. 額の確定後に請求し、入金を受ける
    事務局の確定検査で補助額が決まり、請求後に振り込まれます。
  12. 承継完了と事業化状況を報告する
    承継事実を示す書類を提出し、補助事業完了後は5年間、事業化・賃上げ等の状況を報告します。

採択、交付決定、補助額の確定、入金は別の段階です。採択通知だけで契約せず、交付決定を確認してから着手してください。

申請前に準備する書類と社内体制

共通して準備する主な書類

  • 公募申請書
  • 認定経営革新等支援機関の確認書
  • 事業承継計画表・事業承継計画書の骨子・実施体制図
  • 事業承継実施に係る誓約書
  • 後継者の役員経験・勤務経験・親族関係を示す書類
  • 法人の履歴事項全部証明書、直近3期分の決算書等
  • 個人事業主の確定申告書、青色申告決算書、開業届、青色申告承認申請書等
  • 補助対象経費の見積・仕様書

必要書類は申請類型、後継者の要件、賃上げ、加点項目等で変わります。次回公募のチェックリストを使い、発行から3か月以内などの有効期限も確認しましょう。

経営者が先に決めたい7項目

  1. 承継する会社・事業と、引き継ぐ経営資源
  2. 被承継者・承継予定者と、後継者要件の根拠
  3. 代表者交代、株式・持分移転、廃業・開業の日程
  4. 後継者が主導する新たな取組と設備・外注の必要性
  5. 5年間の売上、利益、人件費、減価償却費、付加価値計画
  6. 補助金入金までの自己資金・借入・支払スケジュール
  7. 見積から事後報告まで証拠を管理する責任者

申請は経営者・申請事業者本人が内容を理解して行います。株式会社DHorseによる申請サポートを利用する場合も、経営者自身が承継計画と補助事業計画を説明できる状態にします。

申請で失敗しやすい7つの注意点

1.承継後に申請すればよいと思い込む

15次の事業承継促進枠では、申請締切日の前に事業承継を行った場合は対象外でした。承継日を先に確定・実行する前に、次回公募の対象期間を確認してください。

2.第三者M&Aなのに事業承継促進枠だけを見る

第三者M&Aの仲介・FA費用は専門家活用枠、M&A後の統合はPMI推進枠を検討します。枠ごとに対象者、契約時期、経費、補助率が異なります。

3.交付決定前に設備を発注する

採択後でも、交付決定前の契約・発注・支払いは対象外です。販売店の納期やキャンペーンを理由に先行発注しないよう、社内の購買担当者ともルールを共有します。

4.設備を決めてから事業計画を作る

設備の機能説明だけでは、承継を契機とした取組や生産性向上との関係が弱くなります。引き継ぐ経営資源、後継者の戦略、顧客への価値、付加価値計画を先に作りましょう。

5.相見積と証拠書類を後回しにする

相見積の条件・仕様がそろっていない、選定理由が公式条件に合わない、契約・納品・支払いの書類がつながらない場合、経費が減額・対象外になる可能性があります。

6.補助金を先に受け取れる前提で資金を組む

補助金は後払いです。設備代等を全額支払い、実績報告の確認を受けるまで入金されません。消費税、対象外経費、減額リスクも含めて資金余力を持たせます。

7.承継・賃上げ・事後報告を採択後に軽く考える

対象期間内に承継を完了できない場合、補助金の返還を求められる可能性があります。上限引上げの賃上げ未達、5年間の事業化状況報告の未提出、無断での財産処分等にも返還リスクがあります。

匿名化した支援経験から分かること

当事務所・当社グループには、「承継後に申請すればよいと思っていたため、すでに承継してしまった」という相談が相次ぎました。これは匿名化した相談傾向であり、全国の件数やすべての公募枠に共通する状況を示すものではありません。

背景には、公募回によるルールの違いがあります。旧制度の経営革新1次~9次では、公募要領が定める対象期間内であれば、すでに承継した案件も対象になり得ました。一方、12次~15次の事業承継促進枠では、申請締切前の承継は対象外です。

過去の公募で認められた進め方が、次の公募でも通用するとは限りません。承継契約、代表者変更、株式・持分移転、個人事業の廃業・開業を行う前に、最新公募要領で順序を確認することが重要です。

同一経営グループの株式会社DHorseが申請サポートした事業承継・M&A補助金(旧事業承継補助金を含む)では、これまで約30件をサポートし、不採択は一度もなく、2026年7月31日時点の社内実績に基づく過去採択率は100%です。ただし、公募回、審査基準、申請内容によって結果は異なり、今後の採択、交付決定、受給を保証するものではありません。

支援経験から特に重視しているのは、承継前の早い段階で、対象枠・承継日程・投資計画・資金繰りを一緒に整理することです。

よくある質問

15次公募に今から申請できますか?

できません。15次公募は2026年7月24日17時で締め切られました。2026年7月31日時点で次回公募の案内は確認できないため、公式サイトを確認しながら、GビズID、後継者要件、承継日程、事業計画、見積、資金繰りの準備を進めてください。

すでに事業承継を完了していても対象ですか?

15次の事業承継促進枠では、公募申請締切前の承継は対象外でした。ただし、第三者M&Aに伴う専門家費用やM&A後の取組など、別枠の対象可能性は個別に確認が必要です。次回公募では要件が変わる可能性もあるため、最新資料で判断してください。

第三者から会社を買う場合、事業承継促進枠を使えますか?

15次の事業承継促進枠は、同一法人内の代表者交代や個人事業主間の事業譲渡を前提とする親族内・従業員承継等が中心です。第三者M&Aなら、専門家活用枠やPMI推進枠の最新要件を確認します。

採択されたら設備を発注できますか?

採択だけでは発注できません。採択後に交付申請を行い、交付決定通知を受けてから契約・発注します。

補助金はいつ入金されますか?

補助事業を実施して全額を支払い、実績報告、確定検査、補助額の確定、請求を経た後です。審査・修正対応等で時期は変わるため、固定日を前提に資金繰りを組まないでください。

申請サポートを利用できますか?

株式会社DHorseが、制度選定、事業承継計画・補助事業計画の整理、必要書類の準備等をサポートします。申請主体は経営者・申請事業者本人であり、申請内容を理解・確認した上で申請します。

まとめ:次回公募前に承継日程と投資計画を整理

事業承継・M&A補助金の事業承継促進枠は、承継を機に新たな取組を始めたい中小企業にとって有力な選択肢です。一方で、承継時期、後継者経験、経営権・所有権の移転、付加価値計画、交付決定前着手、後払いなど、順序を誤ると対象外になり得る条件があります。

次回公募に備え、今の段階で次の5つを進めましょう。

  1. 後継者の経験と親族関係を確認する
  2. 代表者変更、株式・持分移転、廃業・開業の日程を仮置きする
  3. 引き継ぐ経営資源と、新たな取組を整理する
  4. 設備等の概算見積と立替資金を確認する
  5. GビズIDを取得し、認定経営革新等支援機関への相談準備をする

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「承継前の今、どの枠を検討すべきか」「設備投資と承継日程をどう組み合わせるか」「次回公募までに何を準備するか」を整理したい方は、DHorse社会保険労務士事務所へご相談ください。補助金の制度選定・申請サポートは、同一経営グループの株式会社DHorseが対応します。

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承継時期の要件に合わず、省力化設備の導入が主目的なら、中小企業省力化投資補助金(一般型)の解説も比較してください。小規模事業者が販路開拓を中心に取り組む場合は、小規模事業者持続化補助金の解説も参考になります。

公的情報源と確認日

確認日:2026年7月31日。公募回ごとに要件、日程、補助率、上限、対象経費、様式が変わる可能性があります。申請時は公式サイトで最新資料を確認してください。

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