事業展開等リスキリング支援コースでは、研修のカリキュラムだけでなく、会社が何を変え、その結果、対象者がどの職務で何をできるようになるのかを「事業展開等実施計画」で示します。書き方の中心は、経営課題から研修後の職務までを1本の線でつなぐことです。
結論:5段階を1本の線にする
様式第1-3号を書く前に、次の5段階を一文ずつ整理してください。
- 現在の事業・業務と経営課題
- これから行う事業展開、DX・GX化、または人事・人材育成計画
- 対象労働者が今後担当する具体的な職務
- その職務に必要で、現在不足している知識・技能
- 研修の各科目と、受講後にできるようになる作業
この5つがつながらない場合、研修名に「リスキリング」「DX」とあっても、対象訓練として説明しにくくなります。
事業展開等実施計画とは
事業展開等実施計画は、人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースで使用する様式第1-3号です。現在の事業内容、訓練の端緒となる事業展開等、企業内の人事・人材育成計画などを記載し、職業訓練実施計画届とともに提出します。
計画届は原則として訓練開始日の6か月前から1か月前までです。認定経営革新等支援機関の確認が必要になる分類もあるため、提出期限の直前ではなく、研修契約前から準備します。
制度全体の7コースを比較したい場合は、人材開発支援助成金の7コース・対象・申請の流れをご覧ください。
事業展開等実施計画の3分類
| 分類 | 判断の中心 | 計画に書く内容 |
|---|---|---|
| ①事業展開 | 新商品・新サービス、新市場、提供方法の変更など、新たな事業を行う | 現在事業、新たに始める事業、事業を始める時期、対象者の役割、必要技能 |
| ②DX・GX化 | デジタル技術または脱炭素等を具体的な業務へ導入し、仕事の進め方を変える | 変更する業務プロセス、導入技術、対象者が担当する作業、研修との直接関係 |
| ③人事・人材育成計画に基づく異なる職務 | 企業内の計画に基づき、今後従事する予定の異なる職務に必要な技能を習得させる | 人事・人材育成計画、配置予定、職務変更、キャリア形成、生産性向上との関係 |
③を選ぶ中小企業では、認定経営革新等支援機関による計画確認欄があります。誰へ確認を依頼するか、必要資料と所要日数を早めに確認してください。
2026年8月3日以降のDX・GX計画で注意すること
2026年8月3日以降の計画届では、DX・GXに関する訓練でも、職業・職務に間接的に必要な知識や、職務の種類を問わず共通して必要な内容は対象外となりました。
たとえば、DXの概念や一般的なデータ活用の考え方だけを学ぶ研修ではなく、営業担当者が生成AIを使って商品提案書を作成・修正する、排出量算定担当者が自社データを収集して計算するなど、対象者の具体的な職務へ直接適用する研修として説明する必要があります。
詳しい変更点、対象・対象外の例、eラーニング回数は事業展開等リスキリング支援コースの2026年8月改正で確認できます。
書く前に集める6つの資料
- 現在事業の資料:会社案内、商品・サービス一覧、業務フロー
- 事業展開等の社内資料:事業計画、稟議書、導入計画、取締役会資料
- 対象者の資料:組織図、雇用契約、現在の職務、配置予定
- 不足能力の整理:現状スキル、必要スキル、担当予定業務との差
- 研修資料:カリキュラム、到達目標、講師、日程、実施方法
- 費用・契約資料:見積書、申込書、契約予定日、支払条件
様式だけを先に埋めると、担当者ごとに言葉がずれます。最初に社内資料と研修資料を並べ、同じ用語で説明できるようにします。
様式第1-3号を書く順番
1.分類を先に固定する
①事業展開、②DX・GX化、③人事・人材育成計画のどれに該当するかを決めます。複数に見える場合でも、計画の中心となる変化と対象訓練の関係が最も明確な分類を、最新資料と管轄労働局で確認します。
2.現在の事業・業務を具体化する
業種名だけでなく、現在提供する商品・サービス、対象顧客、提供方法、対象者が担当している作業を書きます。現在地が具体的でなければ、何が「新たな分野」「異なる職務」なのか比較できません。
3.変化する事業・業務を書く
何を、いつ、誰に、どの方法で提供するのか、既存業務のどこを変更するのかを書きます。「DXを推進する」「新規事業を行う」だけで終わらせず、業務プロセスや提供物を示します。
4.対象者の今後の職務を決める
対象者が研修後に担当する具体的な作業、配置時期、責任範囲を整理します。全社員を一律に対象とする場合も、それぞれの職務と研修内容が直接結び付くか確認します。
5.研修科目と不足能力を対応させる
研修の科目ごとに「誰が、どの作業で、どの技能を使うか」を対応表にします。一般論にとどまる科目が多い場合は、研修提供者へ詳細カリキュラムや職種別の到達目標を確認します。
研修計画との整合チェック
| 照合項目 | 事業展開等実施計画 | 研修・申請書類 |
|---|---|---|
| 目的 | 事業・業務の変化 | 研修目的・到達目標 |
| 対象者 | 今後の職務・配置 | 対象労働者一覧・雇用保険 |
| 技能 | 不足能力 | 科目・学習内容・修了基準 |
| 時期 | 事業展開・配置の予定 | 訓練開始日・終了日・計画届期限 |
| 費用 | 必要な投資 | 見積・契約・請求・支払記録 |
訓練開始後に対象者、日程、実施方法、カリキュラム等が変わった場合は、変更届の要否を確認します。計画書だけでなく、実際の配置・受講・勤怠・賃金・支払も一致させます。
よくある失敗
- 「DX人材を育成する」など抽象語だけで終わる
- 現在事業と新しい事業の違いが分からない
- 対象者の現在・今後の職務が同じなのに、異なる職務として説明する
- カリキュラムの大半が共通リテラシーで、職務への直接適用を説明できない
- 認定経営革新等支援機関の確認を提出直前に依頼する
- 計画提出後の変更を社内担当者が共有していない
提出前の10項目チェック
- 3分類の選択理由を一文で説明できる
- 現在事業と今後の変化を比較できる
- 事業展開等の実施予定時期を確認した
- 対象者ごとの今後の職務が決まっている
- 不足能力と研修科目が対応している
- 汎用的な科目と職務直結科目を分けた
- カリキュラム、見積、対象者一覧と表現が一致する
- 認定経営革新等支援機関の確認要否を確認した
- 計画届期限と変更管理の担当者を決めた
- 根拠資料を申請ファイルに保存した
公式情報と相談先
本記事は2026年8月24日に、厚生労働省の令和8年8月3日版「事業展開等リスキリング支援コースのご案内」と改正資料を確認して作成しました。様式・対象範囲は変更される場合があるため、提出時は最新の詳細版パンフレットと管轄労働局の案内をご確認ください。
DHorse社会保険労務士事務所では、事業展開等実施計画とカリキュラム、対象者、労務書類の整合確認について相談を受け付けています。







